山里のまど

2019年4月より次女が親元離れて徳島の山奥で山村留学をしています。山村留学のことや山の暮らしについて書いてゆきます。

山村留学のきっかけ(父の視点)

父ちゃん母ちゃんそれぞれ別々、同じお題で書いてしまっていました。

起こったことが同じでも、見方がそれぞれ違って面白いかと思うので両方掲載します。

「山村留学のきっかけ(母の視点)」はこちら。

 

父ちゃんです

 

つむちゃんが「いなか暮らししたいなあ」と言い始めたそもそものきっかけが何だったのか、本当のところいまだよくわかっていません。

本が好きで、その頃(今もだけど)よく読んでいた魔法使いの物語の舞台がいわゆる「田舎」だからかな?というのは妻の推測。

彼女は思いついたことをすぐに口に出さず、想いを練りに練ってから外に出すところがあるので、9歳の子どもの頭の中で、大人が気付かないような小さなきっかけから膨らんできた何か大きなものがあったのかもしれません。

「いなか暮らし」と聞いて頭に浮かんだのは「移住」という言葉で、旅好きゆえに興味はあったものの、明石で店やってるし、長女は高校受験、父親が体調悪くしていたという事情もあり、現実的なものではありませんでした。

 

同時期、どっちが先だったか覚えていないけれど、四国の山奥を自転車旅する機会がありました。

それは、地図の細い谷の奥の奥の平地もほとんど無いような険しい土地に数軒だけの集落がぽつんとあるのを見つけて「ここにどんな暮らしがあるのだろう?」と気になったところから始まった旅。

ほぼ無住の地となってしまったその高知県の伊尾木川をさかのぼる行程は日本の果ての果ての姿を見た思いで衝撃的だったのですが、書き始めると長くなります、これまた別の機会にじっくり。

その高知県側の深い深い山に分け入って険しい峠を越えて、徳島県に抜けた先の木頭という村の光景が、同じく高い山々に囲まれていながら少しばかりの土地に田畑があり、穏やかな暮らしの場を見て何だか桃源郷に辿りついたような思いで、こちらもまた印象に残っていました。

元々木頭の隣の木沢には新婚旅行で来ていたし(そのころから山村好きだった訳で)、前の年にキャンプしに来たりと、少しは知った土地だったのだけど、この旧木頭村の方には来たことがなかったので、それ以来気になってネットであれこれ調べているうちに、山村留学センター結遊館の情報に行きあたったのでした。

家族全員で引っ越ししなくても子どもだけ田舎暮らしを体験できる、親としてもその素敵な土地との関わりができる、面白そうじゃないか、と。

 

正直つむちゃんのイメージしている「田舎暮らし」と重なるものがあるのかどうかわからなかったし、何より、母ちゃんべったり甘えんぼで知らないことに対して慎重な彼女が親元離れて1年暮らすなんて想像できなかったのですが、何か興味を持つものがあるかもしれないと、木頭に連れ出したのが4年生の12月。

結遊館のスタッフさんには「興味があるので見学だけでも」ということで案内をお願いしていました。

 

木頭に向かう道中で、つむちゃんに「お前田舎暮らししたいって言ってたやん、今から行く先の村で1年間暮らしてみるってどう?父ちゃん母ちゃんと別々で、離れて暮らすことになるけど」と聞くと、「やだ!絶対やらない!」

やっぱりねー。

 

「まあ、ちょっと話聞くだけでも聞いてみようや~」と待ち合わせ場所へ。

 結遊館の玄番さん(通称たーたん)に学校~図書館~寮のある北川集落と案内してもらいました。

実は子ども達は最初の学校に行ったところから大はしゃぎ。

住宅地にある無機的なコンクリート造りの地元の学校と違って、高台から自分が桃源郷と感じた村を見下ろすロケーションに地元木材をふんだんに使った温かみのある校内の雰囲気に「すごーい!こんな学校行ってみたい!」と一目ぼれ。

小さな村なのに本が揃っている図書館も、読書好きのつむちゃんには魅力的だっただろうし、結遊館の寮の建物も手造りの遊び道具があったり、楽しげに川遊びする写真があったり。

大人の目からは学校関係だけでなく、木の皮から繊維を取り出して衣服を作る昔からの織物(太布織)の復活を試みていたり、これまた昔の山の産業であった炭焼き小屋を集落で運営していたり、畑の石積みの修復を集落の若い衆が集まって行っている場に行き当たったり、山奥の暮らしに代々受け継がれてきたものを大切にいている姿に感銘を受けました。

 

木頭を離れて宿に向かう道で「つんちゃん、ちょっと山の学校行ってみたいなあ」と言うようになっていました。

その時はまだ余り深く掘り下げずに「また2月の体験会に行ってみて考えようか」と返したのですが、始まりはここからでした。

 

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木頭小中学校

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石積みの修復作業