山里のまど

2019年4月より次女が親元離れて徳島の山奥で山村留学をしています。山村留学のことや山の暮らしについて書いてゆきます。

山里ステイ 黒滝トレッキング

父ちゃんです。

 

 12月に木頭を案内してもらってから、つむちゃんは家で「4月からは木頭だからね~」と山村留学する前提で色々話をするようになりました。

父としては「行け行けぇー」と思う反面「そんなに簡単に決めて大丈夫かいな?」と気にもなってましたが、夢が膨らんでいるようなので深くは突っ込まないようそっとしていました。

 

山村留学申し込みの期限は2月末で、その前、2月上旬に山村留学センター結遊館企画の「山里ステイ」という行事があり、木頭の環境を体験しつつスタッフさんや木頭の人たちと一緒に過ごす機会があるということで参加してきました。

都合により今回は父とつむちゃんの二人。

 

イヴェントのタイトルは「黒滝トレッキング」。

厳寒期に氷結するという黒滝(「くろたび」と読むそう)を歩いて見に行こう、夜は星空を見ながらうどんを食べよう、という企画。

はいはい、滝ね、子どもが行けるようなとこやったら遊歩道みたいなの歩いてちゃちゃっと行くんやね、と思っておりましたが、ちょっと違う。

「現地では積雪した山道を歩けるような靴を用意してください」

「標高1000mを超えるので防寒対策は万全にお願いします」

黒滝は林道終点から1時間半ほど、道は踏み跡程度しかなかったところを今回ある程度整備したそうで、四国とは言え剣山系の深い山の奥なので積雪は当たり前。

夜の「星空うどん」は綺麗な星を見るために集落から遠く離れた林道の標高1000mの峠まで行くと言うのでマイナス10℃くらいは想定しておかないといけないか。

 

まあ、うちの場合は「そういうの」に慣れていて、雪山登山もここ数年行ってるから装備はあったものの、街に住んでる普通の人にとっては「ちょっと山の学校の暮らしを体験」という域を超えてしまってるのではないか、やばいっすね。

これは「山の暮らしの厳しさ」を知らしめるためにわざとハードルを上げているのでは、などとも邪推してしまうところ、結遊館玄番さんののほほんとした口調からして、どうも「このくらい普通」と思っているように見えます。

 

そう、このくらいが普通の環境なのです。

後になって改めて思うのですが「普通」の感覚は土地土地で違うわけで、この「普通」の中で過ごせるというのは何とも素敵なことなんじゃないかな、なんて面白い場所だ、と自分などは思う訳です。

まあその辺は人それぞれで、そんな過酷な環境とんでもないと思う人もいれば、体験自体は良いけれど街とは違うということをもっと意識付けするべきだと考える人もいるかもしれません。

ただ、当の子どもたちは大人の余計な心配をひょいっと飛び越えて未知の世界に入り込んでいったりするもので、現に娘も他の参加者の子どもたちと一緒に山道を駆けて集団の先頭で見えなくなるくらい先々に進んでいくのでした。

 

当日は午前中雨が降って出発が遅れたものの、今年は暖冬で積雪なく至って歩きやすいコンディションでした。

元来、滝があることは知られていたものの整備された道が無くパンフレット等にも載らない存在だったところを、木頭の地域おこし協力隊の方の尽力で法面を補強したり危険個所に梯子をかけ案内板を立てたりと、環境を整えて頂いていたおかげでかなり歩きやすくなっていました。

 

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参加者総勢20人くらい?山村留学センター結遊館のスタッフさんと我々子連れの参加者2家族の他に地域おこし協力隊や移住希望の方、地元のお年寄りの方々など本当に多様なメンバー。

結遊館の玄番さんは20年以上前の関西からの移住者、協力隊の方々はここ数年の移住者、移住検討中で何度かしか来たことのない参加者と、人生のほとんどをこの土地で過ごしたお年寄りの方々、一つの層に固まらず様々な立場の人たちが一同に会して目的地に向かうという、この懐の深さに木頭という小さなコミュニティの他にない良さを感じます。

どうやらこの企画のために集落から広い世代の人たちが集まって、協力して準備を進めてくれていたようで、歩きながら色々な人たちの話が聞けたのも楽しいことでした。

(結遊館のブログにその様子も載っています)

 

子連れの参加者は一家族、大阪からの小6男子と小1女子のきょうだいとお父さん。

子ども同士はすぐに仲良くなるので滝までの往復の時間に色々遊びを考えながらずっと一緒にいました。

 

残念ながら気温が下がらなかったので凍った滝は見られなかったのですが、黒滝は高さ45mを真っ直ぐに落ちる壮大な滝でなかなかの見ごたえ。

こんな滝が地図にも載っていないなんて、これも僻地ゆえなのか。

絶景は行くとこ行ったら普通にある景色だということ、ただここに至るまでが都市からの視点では険し過ぎるから紹介しづらいだけなのか、それはこの奥那賀の至る所にある名もなき渓流や美しい山を見ても思いました。

 

夜の「星空うどん」は結局天気が回復しなかったため公民館屋内で。

でも一瞬の雲の切れ目から宇宙ステーションが横切る光を見ることができて大歓声。

そして何よりも猪肉の煮込みうどんの美味しいこと!

山の幸が沢山入ったうどんの味は忘れられません。

 

 この一日の諸々は山村留学センター結遊館が子どもたちに木頭の生活を体験してもらうために企画されたもの。

ですが実際行って見れば集落の様々な立場の人たちが関わって、何ヶ月も前からそれぞれの得意分野を活かして「この土地でしかできない体験」のために準備してくれていたことがわかります。

実際子どもも大人も感動と驚きある体験を沢山しましたし、この大勢の人たちとの関わり自体が素敵な体験でした。

 

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