山里のまど

2019年4月より次女が親元離れて徳島の山奥で山村留学をしています。山村留学のことや山の暮らしについて書いてゆきます。

いつ誰に伝えるのか

母ちゃんです。

振り返ってみれば、12月中旬にはじめて見学に行き、2月の上旬に体験に行って、2月中に決定、4月から留学って、けっこう早いペースだったなと。

もちろんもうちょっと迷って2学期から行くとか、1年かけて検討して6年生から行くとか、そういう選択肢もなかったわけじゃないのです。

でも、6年生は小学校の中でも大事な役割を担ったり、修学旅行など大きな行事もある学年。卒業のタイミングでは地元の学校にいた方が、その後の中学校生活もスムーズかなあと思ったり、もう1人の留学生候補(ニュージーランドから来るもえちゃん)の留学期間が1学期のみの予定だったので、もしつむちゃんが2学期以降に留学する場合は「留学生がつむちゃん1人だけ」になってしまうかもしれない、ということもありました。

そんなわけで親も「行くなら5年生」という思いがあり、バタバタと決定したわけなのですが、

前回も触れたとおり、本人はわりと期限ギリギリまで迷っていました。


山村留学には「区域外通学」といって、住民票を置いていない地域の学校に通える制度を使います。そのためには、住民票のある自治体の教育委員会と、留学先の自治体の教育委員会の許可が必要です。留学希望の届け出を出す期限は2月末。もし行くならそこから転校まで1ヶ月しかないわけで、関係各所と予定を調整して準備をするにはそれじゃちょっと遅い。そんなわけで、いったいいつ誰に山村留学のことを伝えるのか、ということにはけっこう悩みました。

学校には、年が明けて間もない時期に転校の可能性を伝えて、確定したらまた知らせますということにしました。幸い担任は理解のある先生で、子どもが色んな経験をするのは良いことです、とあっさり受け止めてくれたらしい(父ちゃんが電話した)。

習い事関係も先々の予定が入ってくるので早めに少しずつ伝えていきました。スイミングは、ある程度泳げるようになって本人も満足していたので1月末に退会。百人一首は2月までは大会があったので続けていましたが、本人の気持ちが離れてしまったのかだんだん足が遠のいていきました。ダンスは、当面の間は休会扱いにしてもらうことにしました。

本人がいちばん好きで力を入れていた習い事はピアノ。これはできれば中断したくない。結遊館に相談すると、スタッフのゲンバさんの家に使ってない電子ピアノがあるとのことで、寮に運んでもらえることになりました。ピアノの先生は個人経営の教室なので柔軟に対応してくださり、長期休みに帰省した際にレッスンに行って、あとは留学先で個人練習を継続することに。それでも、四月のはじめに予定されていたピアノの発表会に出られるかどうかというタイミングだったこともあり(結局出なかった)、最終的に留学するのかどうか、いったいいつ決断するのかというのは周囲もけっこうハラハラしていたのでした。

両方のおばあちゃんにも早めに伝えたところ、少々心配そうな様子。本人も親もまったく心配していないかというとそうでもないので、無理もない。でも親としては、本人が少しでも興味を持っているならば、行かずにあとで悔やむよりも、とりあえず行ってみた方が(たとえうまくいかなかったとしても)いいんじゃないかなーと思っていました。


話すタイミングといえば、つむちゃん自身は、ごく僅かな友達だけにしか、留学することを伝えていませんでした。私もママ友には伝えていませんでした

これは、2人とも友達が少ないとか、そんなに自分のことを人にあれこれ話すタイプではないとかもありますが、何よりも「話せることが何もない」状態だったのです。

人に話せばあれこれ聞かれることは間違いないのだけど、行く理由はひとつではなく、話して「なるほどー」と納得してもらえる気もしないし、良いことなのかどうか確信もない。もしかしたら、あかんかったー、ってすぐ戻ってくるかもしれないし。

なんとなく「これがいい」という直感があるけど、実際のところはどうなるかわからない。でも、山村留学に限らず、たとえば進学とか就職とか結婚とか転職とか引っ越しとか、人生で何か大きいことを決めるときって、本当のところはみんなそんな感じではないでしょうか。


つむちゃんが留学した後に、私は「子どもが山村留学している」と人に話すようになりました。するとたまに「もとの学校は、留学することを許してくれたんだね」とか「習い事の先生も理解してくれたんだね」という声が返ってくることがあります。そこでふと「あれ、誰にも事前に相談してないぞ」と気づいた母ちゃん。家族の中では相談したけど、当人が行くと決めたらあとは周囲には「行くことになりました」と伝えただけだなあ…。

周囲とちがう選択をする時って、普通は学校とかいろんな人と相談して徐々に周りの納得感を固めていく感じなのかな?そこで反対されたらやめようかと迷ったりするのかな?受け入れてもらえるまで説得したりするのかな?

私も夫も普段からあんまり周りに相談せず、自分のことは自分でちゃっちゃと決断してしまうタイプなのですが、もしかしたらけっこう周りの人を戸惑わせたりしているんだろうかと今更ながら振り返ったりしたのでした。


4年生の修了式の日、つむちゃんは「山村留学のことをクラスのみんなに伝えるかどうか」担任の先生から聞かれたようですが、本人はNOと答え、普通にクラス最後の日を過ごして帰ってきました。少し前の時期から、日々コツコツとクラス全員分の折り紙を折っていたので、てっきり挨拶して1人ひとりにお別れのプレゼントをするのかと思っていたら、どうやら「ご自由にどうぞ」とロッカーの上に置いただけだったらしい…(そして意外とみんな持って行ってくれたらしい)。

春休み中にひっそり転校し、新学期のクラス名簿にはつむちゃんの名前はありませんでした。つむちゃんが転校したことに気付いてない同級生も、まだまだいるんじゃないかと思います。

 

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