山里のまど

2019年4月より次女が親元離れて徳島の山奥で山村留学をしています。山村留学のことや山の暮らしについて書いてゆきます。

魔女、旅に出る

春休み、山村留学が刻々と近づいてくる毎日。とはいっても休みなのは子どもたちだけで、平日の日中は母ちゃん仕事なので、(在宅勤務なのでその場にはいるのですが)ずっとPCに向かいっぱなしで子どもたちはほったらかしです。つむちゃんはいつもどおり、本を読んだり折り紙したりYouTubeみたり、たまーに外で遊んだり。

そして土日も、客商売(マッサージ屋さん)の父ちゃんは仕事だし、お姉ちゃんも部活があったりして、家族全員が揃う時間はそんなに長くない。

でもせっかくだから何か特別なことを、と、平日に休みをとって家族4人でUSJに出かけハリーポッター大好きなつむちゃん念願の、魔法の杖を手に入れたりもしました。

本人にも家族にもなかなか実感が湧かないのは「しばらく会えなくなる」ということ。

実感がないゆえに山村留学の準備は遅々として進まず、出発前日にようやくバタバタと必要な買い物をして、寮に持っていく荷物を(おもに母ちゃんが)雑に段ボール箱や紙袋に突っ込む始末。

本人は、張り切ってワクワクしているのかというとそうでもなくて、旅立ちの日が近付くにつれて、やや心配なのかな?という様子もありました。

そして出発の当日。出かける準備はぐずぐずとはかどらず、出発時間は予定より遅れぎみに…。そしていよいよ家を出るというときになって「やっぱりサヨナラするのやだ!行きたくない!」と玄関の戸にしがみつくつむちゃん。

いやいやちょっと待て。気持ちはわかるがそれはないよ、向こうでみんなが楽しみに待ってるよ、と父ちゃん母ちゃん。行ってみたらきっと楽しいよ、行ってみようよ、と姉ちゃん。

なだめすかしてなんとか車に乗せたものの、気を紛らわそうとみんなであれこれ話しかけても、ずっとむっつり黙ってる。

なんとか盛り上げようと、つむちゃんが好きなジブリ映画の主題歌のプレイリストや、魔女の宅急便」のサントラをかけてみたりして

淡路島を抜けて四国に入った頃にはようやく少し機嫌が直っていました。

そしとまた山道を延々と登って木頭へ。こんなときにものんきに酒蔵へ寄り道してなかなか出てこない父ちゃんに、母娘3人でプンスカしながら桜の花びら舞う公園でブランコ漕いだり、「なんでこんなところ??」という山奥にある超お洒落なキャンプ場「CAMP PARK KITO」に立ち寄って美味しいランチを食べてひとやすみしたり

そしていよいよ、つむちゃんがこれから暮らすことになる山村留学センター結遊館へ!

はす向かいのグラウンドゴルフ場ではご近所の方々がプレー中。結遊館スタッフのぽんぽんがご近所さんたちにつむちゃんのことを紹介すると、1人のおばあちゃんが「わしらがしっかり可愛がるけん」と力強くおっしゃって、周囲の皆さんも頷く。地域の方々の嬉しそうな様子を見て、あ、なんだかうちの子がものすごく歓迎されてる、と実感したのでした。

そして間もなく、もう一人の留学生のもえちゃんも、ニュージーンドからお父さんと一緒に到着。2月の体験ステイのときにスカイプでお話したことはあるらしいものの、2人の留学生が対面するのは初めて。

この日は山村留学生の取材で徳島新聞の記者さんが来ていたのですが、何を聞かれてもハキハキお話しする積極的なもえちゃんと、そっぽ向いてモジモジしてるつむちゃん。
どちらもマイペースで似たような雰囲気もありつつ、なかなか対照的で面白い。

もえちゃんは、つむちゃんより1つ歳上の6年生。大きなスーツケースを広げたと思ったら、唐突に帽子や髪ゴムを取り出し、楽しそうにニホちゃん(スタッフのほーちゃんの娘、1歳)や、しょうちゃん(結遊館スタッフでニホちゃんの父)のヘアアレンジをはじめたりと、まるで昔からの知り合いで、昔からよく来ている場所のよう。

かたやもう1人の留学生は相棒のパンダ3兄弟を抱えて固い表情。でも結遊館スタッフの皆さんは慣れたもので、ニコニコ朗らかに見守ってくれています。玄関前でみんなで記念撮影したときは、カメラを構えたほーちゃん(実は本業のカメラマンさん)が「あっ、ごめんもう1枚!いまパンダさんが目つむってた!!」とみんなを笑わせ和ませる。

夕方になり、いよいよお別れが近づいてくる。父ちゃん母ちゃん姉ちゃんが帰ろうとすると「一緒に帰る」と半ベソ顔のつむちゃん。「お夕飯の準備手伝う人ー」とぽんぽんに呼ばれてもえちゃんとつむちゃんがキッチンに立った隙になんとかかんとか出発したものの寂しそうな我が子の様子を思い浮かべて、(ほんとにこれでよかったのかな…大丈夫かな…)と胸が痛い。

父ちゃんはいつもと変わらずのほほんとしてたけど、母ちゃんは車の中で涙が止まりませんでしたとさ。(でも、いちばん寂しがっていつまでも泣いてたのは、可愛い妹を愛して愛してやまない姉ちゃんでしたけどね!)

あの日のつむちゃんの顔を思い出すといまだに少し胸がキュッとするのです。

f:id:seonious:20191023224802j:plain