山里のまど

2019年4月より次女が親元離れて徳島の山奥で山村留学をしています。山村留学のことや山の暮らしについて書いてゆきます。

美杉峠を越えて

11月1日(金)

木頭に来るのは何回目か?と尋ねられて「うーん、10回以上?」と答えたのですが、数えてみたら19回目でした、うわっ!

月に2回以上来てますからねえ。

 

木頭までのルートもいろいろ。

いつもは徳島側から国道195号で、高知側土佐山田からも時々、それ以外は神山町から土須峠を越えたり、逆に南の海部町から霧越峠越えて入ったり、ああ、そもそも最初は安芸市の伊尾木川から北川に抜ける千本谷林道を自転車で越えて木頭に入った時に小ぢんまりとした山里の雰囲気に惚れたのだったし、祖谷から歩いて山越えて来たこともありました。

地図見て気付いたのですが、「那賀町に入る道」って険しい山に囲まれているだけに案外数えるほどしかなくて、今やそのほとんどを制覇していたのでした。

今回は那賀町の東北側にある上勝町から行こう、となってそこから那賀町に入るには3つルート。

うち八重地トンネルから木沢に入る道もスーパー林道で土須峠に抜ける道も行ったことあったので、それじゃ今回は行っていない道を通っていこうと上勝の月ケ谷温泉から美杉峠を越えて相生のもみじ川に下りるルートをとってみました。

 

まあ、気分転換な訳ですが、ちょっと理由もあって11月はみかんの季節のはじまり。

徳島でみかんの産地と言えば勝浦町ということで、うちにはみかん大好物のつむちゃんの姉ちゃんがいるので、道の駅に立ち寄って大量購入。

そのまま勝浦川をさかのぼって上勝町から那賀町に入ろうという流れになったのです。

 

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上勝にも何度か来ていますが、深く刻まれた渓谷の地形では川沿いに土地が少なくて、山の斜面に家々がまばらに見えるのはこれまで四国の山中あちこちで見てきた光景です。

ただ、ここでは山の高いところにある傾斜地集落でも水田をつくっているところが多く、山の斜面の等高線を描くように不規則な形の棚田が並ぶ光景は思わず見とれてしまうほど圧巻です。

同じくらいの標高と地形でも祖谷の方では水田はほぼ見られなかった訳で、土地によって山村の暮らしも違ってくるのだと知ってまた興味をひかれます。

ここでは少なくとも江戸時代の初め頃から棚田が拓かれていたそうで、上流から水路を引いてきた地区もあるとのことなので、実に多大な労力であったと思いますが、それほど稲作は安定した主食源として魅力があったのでしょう。

そういえば峠を越えた木沢の側でも山の上の集落で水田が見られて珍しいなと思っていたのですが、それも山間部では尾根づたいに交流があったという証なのかも知れません。

今回立ち寄った樫原の棚田は以前にも訪れたことがあったのですが、以前来た時は「見事な景色だな」と思いつつもその本当の凄さまで気付いてなかったのだなと思います。

今回四国の山里をあちこちと訪ね回っている中で改めて見てみると、この光景をつくりあげるまでの不断の努力と熱意があったことを思い巡らせます。

 

樫原集落でも一番の高所の辺りで柚子の収穫をしていたおばあさんがいたので話を聞くと、この辺りのゆずは形が悪くて加工用にならないけど、木頭の柚子は別格で、高い値段で丸のまま売れるから羨ましいということ。

そういえば木頭では柚子の方が高く売れるから稲作をやめて田んぼを全部柚子畑にしたと聞きました。

木頭柚子、すごいんだな、と思うと同時に特産品があるということの強みのようなことも思い知りました。

 

棚田を堪能した後に美杉峠を越えて馴染みの那賀町へ。

まあ、それなりの峠道ですが標高691mというのが最近だと軽く感じてしまうのです。

例えば八重地から木沢の峠は1000m近くまで上るので、それに比べると細く曲がりくねった道を進む時間が短くて楽だなあと。

いや、舗装が少々痛んでいるところがあったり小石や木の枝が落ちてたりするので、一般的な感覚で言うと全然走りやすくないんでしょうが、まあ舗装はされてるし離合できる場所もほどほどにあるし・・・。

うーん、これを「楽だ」と書いてはアカンのでしょうかね?

とりあえず四国の国道県道でない峠道という条件の中では整ってる方なのではないかと思いますよ。

 

上勝側は杉林の中の細い渓流沿いの景色が雰囲気良く、峠の手前の上勝から北側の眺望もなかなかです。

峠下りて那賀町相生側は、上勝と違って川沿いに平地があった集落がひらけているのでちょっと違う景色。

緻密な石積みがなされた田んぼは一枚一枚の広さがあって、民家の造りもなかなか貫禄あり、ある程度の平地が得られることの豊かさに気付かされます。

紅葉川という名の通り紅葉が美しい場所らしいので時間がとれたら11月後半くらいに来てみたいところ。

 

と、なかなか走りごたえのある峠道です。

とはいえ、上勝と那賀側上流域の間の移動需要なんてそうそうないんでしょうなあ。

峠越えでの対向車は1台だけでした。

検索したら自転車で越えている人のブログがよく出てきましたが、麓から峠までの標高差500m、ほどほどに上りごたえあるのでしょうか。

舗装されているのでロードバイクでも行けそうですが、舗装が痛んで陥没しているところあり、小石や小枝が落ちているのは当たり前なので、下りでぶっ飛ばすのは危険かもしれません。

 

とりあえず上勝と上那賀方面を結ぶルートでは最短でしょう。

八重地より峠の標高が低いので冬場でも通りやすいかと思います。

まあ、個人的には山深い地の怪しさを求めてしまうので次は八重地かスーパー林道かな。

 

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